ラム酒を紐解く
ラムって?
けっして仔羊(lamb)の解説ではありません。ラム(rum)とはサトウキビの廃糖蜜または絞り汁から造られる蒸留酒で、南極大陸を除く全ての地域で造られています。味のバリエーションが最も多い蒸留酒とされており、それだけに理解されていないことがたくさんあります。実は、その造り方や歴史から、世界史との密接な関係が見えてくるお酒なんです。
ラムの分類
バリエーションの幅広いラムの分類には、次の三つの要素が深く関係しています。
【原 料】
サトウキビの処理方法の違い
トラディショナル
砂糖を作る際に取り除く「糖蜜」が原料。つまりラムは砂糖の副産物だったのです。現在では世界の9割がこの製法です。
アグリコール
砂糖を作らず、サトウキビジュース100%を原料としています。19世紀にフランス領植民地で確立した製法です。
ハイテストモラセス
サトウキビジュース100%を加熱し、砂糖を作らずにシロップ化したものが原料の、最も新しい製法です。
【熟 成】
熟成期間や熟成方法による違い
ホワイト・ラム
基本的に樽熟成させていない、または短期間の熟成後に活性炭で濾過した無色透明のラムです。ラムの中で最も生産量が多いタイプです。
ゴールド・ラム
基本的に大樽またはバーボン樽などで3年未満熟成した、薄い褐色のラムです。
ダーク・ラム
基本的にバーボン樽などで3年以上の熟成した、濃い褐色のラムです。
スパイストラム
薬草を漬けて薬として用いたり、香辛料や砂糖を加える製法で造られる混成酒を指します。ラムリキュール、ラムパンチなども混成酒です。
ゴールド・ラムやダーク・ラムは内側を焼いた樽が使われたり、香りや色づけのために果実やカラメルが使われることもあります。
【産 地】
過去の宗主国の酒造方法の影響
過去の宗主国が スペイン系
キューバ、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ベネズエラ、グアテマラ、パナマ、他
表記は「RON」。製法はシェリー酒のソレラシステムを応用。味わいは芳醇な甘さのものが多い。キューバのライトタイプ。
過去の宗主国が フランス系
マルティニーク島、グアドループ島、ハイチ、モーリシャス島、ユニオン島、他
表記は「RHUM」。製法はコニャック的な手法。AOC※の承認あり。香り豊かで繊細な味わい。
過去の宗主国が イギリス系
ジャマイカ、ガイアナ、バルバトス、トリニダートトバコ、他
表記は「RUM」。製法はスコッチ的でブレンデッドウイスキーの応用。重めでしっかりとした味わい。
※アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ。フランスの農業製品の品質を保証する認証制度。
ズバリ!おすすめラムは、
バカルディ、マイヤーズやロンリコ、レモンハート…慣れ親しんだ銘酒たちから、さあ一歩踏み込んでみよう!
【ホワイト・ラム】
ペール ラバ(産)マリー・ガラント (製)アグリコール (宗)仏
十七世紀に実在したキリスト教宣教師ペールラバはラムの品質向上に寄与した。骨太で風味の強いタイプの代表。
トロワ リヴィエール(産)マルティニーク (製)アグリコール (宗)仏
アグリコール独特の青々しい風味が際立つドライタイプ。ストレートで!
【ゴールド&ダークラム】
エル ドラド15年(産)ガイアナ (製)トラディショナル (宗)英
木製の単式蒸留器や連続式蒸留器を駆使して造られた、四種の原酒のブレンド。
バルバンクール15年(産)ハイチ (製)アグリコール (宗)仏
コニャックの手法を用い、リムーザンオーク樽で熟成。
ロン サカパ23(産)グアテマラ (製)ハイテストモラセス (宗)西
ラムで初めて殿堂入りしたまさに最高峰。独自のソレラシステムを採用し6~23年の原酒がブレンドされる。
ロン マツサレム15(産)ドミニカ共和国 (製)トラディショナル (宗)西
キューバ革命後、キューバから現在の地で造られ、ソレラシステムで複数の樽が使われる。
さらにはウイスキー同様、個性豊かなボトラーズラムの存在も見逃せません!